ちゃふちゃふログ

日記や雑記、勉強したことの備忘録。

アクセシビリティの確保・向上の推進に使える数字

この記事はAdventar アクセシビリティ Advent Calendar 2023の5日目の記事です。

アクセシビリティの確保や向上を提案すると、「それによって恩恵を受ける人はどれぐらいいるのか」というようなことを聞かれることがあります。これに対する返しとしては「アクセシビリティが向上すると一般にユーザビリティも向上するため、アクセシビリティが向上することによる恩恵はすべての人が受けます。アクセシビリティは必ずしも障害者や高齢者のためだけのものではありません」といったことを返すのがよいと思いますが*1、それはそれとして障害者や高齢者についてのデータを頭に入れておくことは有用でしょう。

さらっと返答に含めることができればこちらの知識や熱意のアピールに繋がりますし、プレゼン資料を作る際にも役に立ちます。この記事では、アクセシビリティの確保や向上の推進に使える数字を取り上げます。

日本の障害者数は人口の約9.2%

令和5年版 障害者白書(全体版)参考資料 障害者の状況から。

身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、各区分における障害者数の概数は、身体障害者(身体障害児を含む。以下同じ。)436万人、知的障害者(知的障害児を含む。以下同じ。)109万4千人、精神障害者614万8千人となっている(図表1)。これを人口千人当たりの人数(※)でみると、身体障害者は34人、知的障害者は9人、精神障害者は49人となる。複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないものの、国民のおよそ9.2%が何らかの障害を有していることになる。

3区分を足すと障害者数は1159.8万人となり、1000万人を超えています。割合にして人口の9.2%となり、10人に1人に近い割合で障害当事者がいるということになります。これはなかなか衝撃的な数字ではないでしょうか。

ちなみに筆者はこの割合を7.6%と覚えていましたが、これは令和3年版 障害者白書の数字でした。

日本の障害者の法定雇用率は2.7%

令和5年度からの障害者雇用率の設定等について(PDF)から。

令和5年度からの障害者雇用率は、2.7%とする。ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることとする。

2.7%は約37人にひとりの計算です。また、上記は民間の話。国および地方公共団体は3.0%で、約33人にひとり。

日本の高齢化率は29%

令和5年版高齢社会白書(全体版)1 高齢化の現状と将来像から。

我が国の総人口は、令和4年10月1日現在、1億2,495万人となっている。65歳以上人口は、3,624万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も29.0%となった。

人口の3割近くが高齢者ということになります。すさまじいなあ…。この割合は年々増えていきます。

高齢化率は上昇を続け、令和19年に33.3%となり、国民の3人に1人が65歳以上の者となると見込まれている。令和25年以降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、令和52年には38.7%に達して、国民の2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されている。

加齢によって身体能力が衰えたり色の識別が難しくなったりということがありますが、割合を見ると高齢者でも使いやすいことがどれだけ大事かよく分かります。

日本の色覚障害者数は男性で4.5%、女性で0.156%

色覚障害者の移動等円滑化に関する調査研究2.色覚障害者の実態の把握(PDF)から(孫引き)。

先天色覚異常の発現頻度については、1979年に約33,000人の児童を対象とした大規模な調査が実施された。この調査により、男性の4.50%、女性の 0.156%に先天赤緑色覚異常が現れると推定された。

女性の色覚障害は少ないですが、男性の色覚障害は約20人にひとり弱といったところ*2。かなり昔の調査ですが、今調査すると違う数字が出てきたりするんでしょうか。ちなみに日本では色覚障害で障害者手帳が交付されることはありません。

世界の障害者数は人口の約16%

WHOのファクトシート(英語。2023年)から。

An estimated 1.3 billion people experience significant disability. This represents 16% of the world’s population, or 1 in 6 of us.

世界の障害者数は13億人と推定されており、約6人に1人に相当します。日本とかなり割合が違いますが、おそらく障害の定義の違いや、先進国と発展途上国の事情の違いなどが理由なのではと思います。

筆者はこの数字を15%と覚えていましたが、少し古い数字だったようです(国際連合広報センターの障害を持つ人々に関するファクトシート(2013年)では15%になっていました)。

2022年のアメリカでのアクセシビリティ関連の訴訟数は4035件

2023 Midyear Digital Accessibility Lawsuit Report(英語。フォームからの登録が必要)から。

  • 2018年は2314件
  • 2019年は2890件
  • 2020年は3503件
  • 2021年は4011件
  • 2022年は4035件
  • 2023年は4220件(推定)

と、年々増加傾向にありましたが、ここ3年ほどは4000件程度で推移。これ以上大幅に増えることはないんでしょうか。

ちなみに書籍『Webアプリケーションアクセシビリティ』*3では、訴えを受けたことがある企業として以下の企業が挙げられています。

その他にも企業ではありませんが歌手のビヨンセのウェブサイトが訴えられたり、2000年に開催されたシドニーオリンピックのウェブサイトが訴えられた事例もよく知られています(米ではドミノ・ピザが「クーポンが読み取れない」で敗訴。ウェブやアプリは障害者が利用しやすいか)。

感想・まとめ

改めて見るとどれもすさまじい数字です。特に障害者の割合は非常に多いなと感じるのですが、それにしては普段の生活で障害当事者が目に入ってくることは少ないと思い、現在の健常であることが前提の社会でどれだけ障害者が社会に出てきにくいかを表しているようにも思います。

自分の備忘も兼ねて書いた記事ですが、お役に立てば幸いです。なお、このブログにアクセシビリティの問題があることは把握しており、修正予定です…*4

*1:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1にも「しばしば利用者全般のユーザビリティを向上させる」と書かれている

*2:色覚障害が男性に多く女性に少ない理由をTwitterで補足して頂きました。興味のある方はご覧下さい

*3:みんなも読もう!

*4:コントラスト比の問題、リンクが色でしか判別できない問題は把握しています